I
(助動)
動詞および「る」「らる」「す」「さす」「しむ」などの助動詞の未然形に付く。 打ち消しの「ず」に推量の意を加えたもので, 確定的に打ち消さずに主観的・未来的・予想的な意が加わる。
(1)打ち消しの推量を表す。 …ないだろう。

「梅の花咲きて散りなば我妹子(ワギモコ)を来むか来〈じ〉かと我(ア)が松の木そ/万葉 1922」「かかる所に住む人, 心に思ひ残すことはあら〈じ〉かし/源氏(若紫)」

(2)打ち消しの意志を表す。 …ないつもりだ。 …たくない。

「櫛も見〈じ〉屋内(ヤヌチ)も掃か〈じ〉草枕旅行く君を斎(イワ)ふと思ひて/万葉 4263」「手塚が郎等をくれ馳せに馳せ来て, 主を討たせ〈じ〉と中に隔り/平家 7」

(3)当然の打ち消しを示す。 …べきではない。

「言ひ続くればみな源氏物語・枕草子などに, ことふりにたれど, 同じ事また今さらにも言は〈じ〉とにもあらず/徒然 19」「女出で来て, え出でおはせ〈じ〉。 とどまり給へ, といふ/宇治拾遺 1」

〔(1)已然形の用例はまれで, 係助詞「こそ」の結びとして例がわずかに見られるだけである。 「人はなど訪はで過ぐらん風にこそ知られ〈じ〉と思ふ宿の桜を/新続古今(春下)」(2)「じ」は推量の助動詞「む」に打ち消しの意の加わったもので, 推量の助動詞「べし」に打ち消しの意の加わったものと見られる「まじ」とは, 「む」と「べし」との意味上の差と同程度の差があるとみられる。 (3)「じ」は, 打ち消しの語である「ぬ」(あるいは「な」「に」)と形容詞をつくる接尾語「し」との融合によってできたものといわれる〕
II
(接尾)
名詞や形容詞語幹に付いてシク活用の形容詞を作る。
(1)…に関係ないなどの意を表す。

「川の上(エ)のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時~けめやも/万葉 491」「不喜見, みまくほし~/新撰字鏡」

(2)それらしいさま, そのような様子などの意を表す。

「男じ」「鴨じ」

(2)は, 一般に「じもの」の形で用いられる。 → じもの〕
III
「し」の濁音の仮名。 硬口蓋破擦音(または歯茎摩擦音)の有声子音と前舌の狭母音とから成る音節。
IV
じ【侍】
律令制で, 篤疾者や八〇歳以上の老人の世話をするために, 庸・雑徭(ゾウヨウ)を免除された人。
V
じ【児】
一人称。 親などに対して子供が自分のことをいう語。 わたくし。

「~は不幸にして未だ良師を得ません/魚玄機(鴎外)」

VI
じ【地】
〔呉音〕
(1)地面。 大地。 土。 ち。

「雨降って~固まる」「~をならす」

(2)その地方。 その土地。

「~の名産品」「~の人」

(3)囲碁で, 石で囲んで占有した部分。
(4)生来のもの。 作り物ではないもの。 (ア)本来身に備わっている性質。 持ち前。

「あれが彼の~だ」(イ)人の肌。 きめ。 「~がいいからお化粧が映える」「~が荒れる」

(5)加工や細工の土台。

「~の厚い織物」「めっきがはげて~が出る」

(6)(目立つ部分に対して)基となって支えている部分。 (ア)布・紙などで, 模様のない部分。 「水色の~に白の水玉」(イ)文章で, 会話・歌などでない部分。 (ウ)「地謡(ジウタイ)」の略。 また, 一曲の詞章のうち, 地謡のうたう部分。 (エ)日本舞踊で, 伴奏のこと。 (オ)邦楽で, 何回も繰り返し演奏される, 基礎的な楽句。 (カ)三味線の合奏で, 上調子に対して, 低い基本の調子。
(7)「地紙(ジガミ)」に同じ。

「扇屋の女に今はやる~などを持つて参れの由/浮世草子・一代男 4」

~が・出る
隠していた本性が露出する。
~で行・く
(1)飾らずにありのまま振る舞う。
(2)想像上の事柄などを現実に行う。

「映画の筋を~・く」

VII
じ【字】
(1)言葉を書き表すのに用いる記号。 文字。

「~を覚える」

(2)(言葉や人名の最初の一字に「の字」を加えて)その言葉や人名を遠回しに言う場合に用いる。

「彼は彼女にほの~だ」「まの~(政次のことなり)/人情本・梅児誉美(初)」

(3)〔銭には四文字が刻されているところから, その四分の一の意で〕
二分五厘の称。 また, 一文銭のこと。 もん。

「一銭一~損かけまじ/浄瑠璃・冥途の飛脚(上)」

(4)楊弓や双六などに賭ける銭。 紅白の紙に包む。

「いや~にて候はず/浄瑠璃・松風村雨」

(5)漢字。 特に, 字音で読まれるものとしての漢字をいう。

「和名なくば, 何にても~のままによめかし/胆大小心録」

VIII
じ【寺】
助数詞。 寺院の数を数えるのに用いる。

「末寺三千 ~」

IX
じ【持】
碁や歌合・香合などで, 互いに優劣の定めがたいこと。 引きわけ。 もちあい。 もち。
X
じ【時】
※一※ (名)
(1)時間の単位。 秒の三六〇〇倍。 分の六〇倍。 記号 h 時間。
(2)とき。 ある特定の時刻。

「~のかはるまで誦みこうじて/枕草子 25」

(3)特に仏道の勤行の時刻をいう。

「日中の~などおこなふ/枕草子 123」

※二※ (接尾)
(1)名詞に付いて, 「とき」「おり」などの意を表す。

「空腹~」「革命~」「第二次世界大戦~」

(2)助数詞。 時刻を表すのに用いる。

「六~半に起きる」

XI
じ【柱】
琴などの弦楽器のこま。
琴柱
XII
じ【次】
助数詞。 回数・順序などを表す。

「第一~探検隊」

XIII
じ【痔】
肛門やその付近に生じる病気の総称。 痔核・痔瘻(ジロウ)・脱肛・切れ痔など。 痔疾。
XIV
じ【箇】
〔古くは「ち」か〕
助数詞。 数詞に添えて, ものを数えるのに用いる。

「ななそ~やそ~は海にあるものなりけり/土左」

〔現在, 「みそじ」「やそじ」などの形で残る〕
XV
じ【路】
〔「みち」の意の「ち」の連濁音化〕
(1)名詞の下に付いて, そこを通る道, そこへ至る道などの意を表す。 また, その地方の意を表す。

「山~」「大和~」「家~」

(2)日数を表す語の下に付いて, その日数だけかかる道のりであることを表す。

「三日~」

XVI
じ【辞】
(1)ことば。 文章。

「告別の~」

(2)漢文の文体の一。 賦に似ており, 抒情性の豊かな韻文的要素の強いもの。
(3)国文法で, 単語を文法上の性質から二大別したものの一。 (ア)橋本進吉の説では付属語(助詞・助動詞)をいう。 (イ)時枝誠記の説では, 概念過程を経ることなく, 事柄に対する言語主体の立場を直接に表現する語をいう。 助詞・助動詞のほか, 感動詞・接続詞・陳述副詞をも含む。
~を低くする
相手に敬意を表して丁寧な言葉を使う。

「~して頼み込む」


Japanese explanatory dictionaries. 2013.

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